新年のご挨拶
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
さて、昨年の元日に発生した能登半島地震から一年が経ちました。
被災されましたすべての方々に、あらためてお見舞い申し上げますとともに、復興に向けてご尽力くださっている皆さまに心より感謝いたします。
昨年、被災寺院や避難所を訪問した際に、聞こえてきた声がありました。それは、私の左手をご覧になっての声でした。ご門徒の方々が口々に、「あ、本当や。大事なもん忘れとった、お数珠持っとらんなんね。」と仰いました。
手を合わせて「なむあみだぶつ」とお念仏申す、そのことは普段何でもない感覚になっておりましたが、そうではないと。お念仏が私に届けられているという事実が、本当にただ事ではない、私たちには、「南無阿弥陀仏がある」んだということをあらためて心に刻みました。
「我らには念仏がある」という実感を持って生活をされている能登のご門徒は、物心両面の支援を必要とされています。物心の「心」の部分、つまり「真宗の生活の回復」、「仏法を聞き喜ぶ場の回復」が望まれていることを、現地で痛感したことです。
私たち真宗大谷派は、本願念仏のみ教えをともに聴聞する“御同朋”が互いに手を取り合い、一人ひとりの中に「人間の真の幸福」が生み出されんことを願いとし、信仰運動として「同朋会運動」を推進しています。
このたびの災害からの復興を期す能登にこそ、同朋会運動を「証していく」強い決意を持ち、「念仏の声が響く場の再興」を実現せずにおれません。
お内仏をなくされた方には「ご本尊」を、聞法の場をなくされた方にはお念仏申せる場の復興を、本願念仏のみ教えを受けたものとして、仏教的・大乗的支援というものを模索し、創造してまいりたいと思います。
共にお念仏を申し、宗祖が示された「傍観者のいない、見捨てる人・見捨てられる人のいない浄土への導き」、そして本願から賜る熱意を、あらゆる人々と共に拝受してまいりたいと念願しております。
2025年1月1日 宗務総長 木越 渉