新年のご挨拶
昨年は大谷派において「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」を厳修いたしました。
京都国立博物館の「親鸞展」などの企画も同時に催され、本当に多くの方々のご参拝をいただきました。宗派内外、多くの方々のご協力をいただき、結願を迎えられたことに対し、衷心よりお礼申し上げます。
立教開宗は親鸞聖人の主著である『顕浄土真実教行證文類』(「教行信証」)が著されたことを起源とし、その御真筆である「坂東本」は人類の負託を受けて当派が所蔵しており、その御筆跡から宗祖に思いを馳せることができるよう工夫をいたしました。
また、引き続き行われる教区における慶讃法要において、親鸞聖人を、より身近に感じることのできるよう、教材の作成等を進めております。
宗祖が説かれる本願の、一切衆生の救済は、まさしく大乗仏教が2000年前に仏道における利他性を見出したことに呼応するものと強く感じます。そしてそのことを社会に向けて申してまいりました。
しかし、世界は依然として紛争が続き、昨年末にはガザ地区において、父親が白い布で包まれた幼い我が子のご遺体を抱き、涙ながらに「何故だ」と叫ぶ光景を目の当たりにいたしました。
ウクライナにおいて若き医者が幼い命を救えず、その小さなご遺体の前で「殺すな」と、涙ながらに訴えておられたことと、全く同じことが今なお起きています。
仏教徒として「自利利他円満」、「共なる救い」、つまり隣の笑顔なくして我が幸せは何処にもないこと、真に生活の指針となる宗教の有り方を、世界に向けて強く発信しなければならないと痛感いたしました。
今こそ「世界に開かれた仏道」を示す時。
危機感をもって、そのこと一つを成就するため、共々に歩んで参ることのできる年となるよう念願いたします。
2024年1月1日 宗務総長 木越 渉