─年頭の挨拶─
南無阿弥陀仏 人と生まれたことの意味をたずねていこう
新年を迎え、仏祖の御前で身を正し、新たな年を歩み始められたことと拝察します。
さて、宗門はいよいよ、宗祖親鸞聖人の御誕生と、浄土真宗の立教開宗を記念する年をお迎えしました。
記念という言葉には、「出来事や人物を思い起こし、心を新たにする」という意味がございます。私はそれを、根源に帰する意味での「再興」、「出直し」、「出あい直し」の時と受け止めています。
「出あい直す」とは、自らと自らのいのちや精神を形成してきた歴史との出あい直しです。仏法をいただく大事な視点です。
御法事などにおいて、人は皆、先祖先達の生涯に思いを馳せ、その人と自らとの縁を、その人と出あえたことの意味や慶びを、あらためて心に刻み直すのではないでしょうか。
それは、そこにあった深い願いや関係性が、あらためて確固たる存在として、自らの中に新たに誕生するということです。
つまり、教えにふれることを通して、自らの感覚や感性が養われ、自らに教えが開く世界観を感得するのです。そこに教えを聞き続けることの大切な意味があります。
そして私たちは、聞法によって「共に教えられる者どうし」です。人と人とが手を携え合える依り処を教えに聞き、生きる道しるべとして、私たちに届けられているのが、「南無阿弥陀仏」の名号です。
私たちは、その法流に預かり、はからずも今、如来のはたらきかけ(よびかけ)によって信心を明らかにする「再興」の時を迎えました。
汝起更整衣服、(汝、起ちて更に衣服を整え)
合掌恭敬、(合掌恭敬して、)
礼無量寿仏。(無量寿仏を礼したてまつるべし。)
十方国土 諸仏如来、(十方国土の諸仏如来、)
常共称揚 讃歎彼仏 無着無碍。(常に共にかの仏の無着無碍にましますを称揚し讃歎したまう。)
(『仏説無量寿経』巻下、『真宗聖典』七十九頁)
さあ、いよいよ慶讃法要です。
このたびの法要は、阿弥陀堂・御影堂の両堂にて、同時にお勤めをさせていただく初の法要となります。両堂から境内へと、十方へと響流する正信偈、堂内をこだまする恩徳讃。私自身がその時と場を賜る一人として、その情景を想像するだけで、もはや感極まるものを憶えます。
慶讃テーマ「南無阿弥陀仏 人と生まれたことの意味をたずねていこう」のもと、溢れるお念仏の声に促され、私にまで届けられた念仏の教えを慶び讃え、根源に帰す御仏事として勤めたいと願います。
一人でも多くの皆さまのご参拝を、心よりお待ちしております。
共にお念仏を申させていただきましょう。
南無阿弥陀仏