2007年2月9日、男女平等参画社会の実現に向けた要望書を提出しました。
内閣総理大臣 安倍晋三様
厚生労働大臣 柳澤伯夫様
男女平等参画社会の実現に向けた要望書
柳澤伯夫厚生労働大臣におかれては、さる1月27日、女性を子どもを産む「機械」や「装置」に例えた発言をされ、さらには、2月6日の会見でも、若い人たちが「結婚し、子どもを2人以上持ちたいという健全な状況にある」と発言されました。
私たち真宗大谷派は、性差別を克服し「男女両性で形づくる教団」の実現を目的に女性室を設置して10年になります。教団として克服すべき問題は山積しておりますが、これまでの歩みの中で明らかとなった課題は、男女が平等に社会に参画して行くことの大切さであります。この取り組みの中から、ご本人にとどまらず今を生きる私たち一人ひとりが、このたびの発言のもつ意味を考えなければならないという認識のもと、意見を表明します。
仏教は、私たち一人ひとりが、かけがえのない尊いいのちを賜って生きていることを教えています。しかし、私たちは、これまで経済を社会の中心に据え、効率のよさを追い求めたことによって、いのちの誕生を人間の機能としてのみとらえ、いのちを私有化し、優劣を付け、操作しようとしてきました。このことは、深く懺悔しなければなりません。
もとより、このたびの発言は、意図的に女性を侮辱しようしたものでなかったことは、本人が釈明、謝罪されているとおりです。しかし、だからこそそこには深刻な問題が存在しているのではないでしょうか。
まず、少子化問題の原因を、女性が子どもを産まなくなったからと、短絡的に捉えています。しかし、安心して子どもを産み育てられない社会にこそ、少子化の原因があるのです。今の社会が安心して子どもを産もうとする環境にないことを、女性たちは無言のうちに訴えているのです。いのちを社会や国の都合によって問題化し、さらには、「いのちの誕生」を女性に押し付けてはなりません。先の大戦時、「産めよ増やせよ」と女性たちに圧力をかけ、若者たちを戦場に送り出したことと同様の過ち、全てに国家を優先するという過ちを決して繰り返してはなりません。
次に、二度目の発言は、既婚者に対して「子どもはまだ?」と何気なく聞くことと同じように、結婚を選ばない若者や、さまざまな理由で子どもに恵まれなかった夫婦を傷つける発言であります。結婚や出産はきわめて私的な問題であり、国や社会が決して介入してはなりません。女性は出産することができますが、その事だけが女性の生き方のすべてではありません。
さらに、出産や育児を男女ともに担うことにおいて親と子が共に育っていく環境を整えるべきであります。いまだにそれは女性の役割という認識が根強い上に、男性は依然育児に関わりにくい労働環境があります。男女とも安心して子どもを育てられる環境を整え、「男女共同参画」をもっとも身近な家庭から始める必要が今こそ求められています。
以上、今回の発言が内包する問題の重大性を真摯にうけとめていただき、男女が共に豊かに生きられる社会の実現に向かって、なお一層取り組みが進められますよう願うものであります。
2007年2月9日
真宗大谷派解放運動推進本部長 安藤 伝融