12月26日、法務省が死刑確定者1名の死刑を執行したことについて、真宗大谷派では同日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。
死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明
12月26日、福岡拘置所で1名の死刑が執行されたことに対し、遺憾の意を表明します。
私たちは、死刑が執行されるたびに「死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明」を宗派として表明し、広く社会に対して死刑制度について論議していくことの大切さを呼びかけてまいりました。このたびも死刑が執行されたことは、誠に悲しいことであります。
かけがえのないいのちを奪う殺人という犯罪は、決して許されることではなく、そして被害者の方々の悲しみ、痛みは私たちの想像を絶するものであります。
しかし、犯罪を起こした者のいのちを奪う死刑の執行は、法に基づくものであれ、国による殺人であることに変わりがなく、私たち人間が取り返しのつかない罪をさらに重ねることにほかなりません。
阿弥陀如来の本願においては、どのような罪を犯した人間、また未だ反省や悔悟の気持ちにいたらない人間であっても、存在そのものを排除することなく、かけがえのないいのちとして尊重することをとおして共に生き合える世界となることが願われています。私たちは、その根源の願いをたずねて、一人ひとりの人間のいのちの尊厳が見出される社会の実現を願うものであります。
死刑の執行は、根源的に罪悪を抱えた人間の闇を自己に問うことなく、他者を排除することで解決とみなす行為にほかなりません。死刑制度は、罪を犯した人がその罪に向き合い償う機会そのものを奪います。また、私たちの社会が罪を犯した人の立ち直りを助けていく責任をも放棄し、共に生きる世界をそこなうものであります。
死刑の執行によって、被害者遺族は苦しみや怒りから本当に解放されるのでしょうか。私たちは、死刑に関する意見や立場の違いを認め、遺族の悲しみや思いに向き合いながら、この制度について論議していく所存です。
ここに、あらためて今回の死刑執行に遺憾の意を表明すると共に、今後は死刑執行を停止し死刑制度についての論議が広がり、死刑廃止に向けての取り組みが進められるよう願うものであります。
2019年12月26日
真宗大谷派宗務総長 但馬 弘