7月26日、東京拘置所で1名の死刑が執行されたことについて、真宗大谷派では同日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。
死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明
7月26日、東京拘置所で1名の死刑が執行されたことに対し、遺憾の意を表明します。
私たちは、死刑が執行されるたびに「死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明」を宗派として表明し、広く社会に対して死刑制度について議論していくことの大切さを呼び掛けてまいりました。このたび死刑が執行されたことは、まことに悲しむべきことです。
言うまでもなく、かけがえのないいのちを奪う殺人という犯罪は決して許されるものではありません。被害に遭われた方やご遺族の痛みや悲しみは想像を絶するものであります。
尊い生命が奪われた時、私たちは、罪を犯した人への憎しみ、嫌悪感が先立ちます。しかし、今一度、犯罪の背景について考えていきたいものです。
自分自身は仮に被害者になることはあっても、決して加害者になることはないという思い込みが根底にあります。しかし、浄土真宗においては、私たち人間は、誰もが縁によって罪を犯す危うさを抱えた存在であると教えられます。
死刑の執行は、罪を犯した人がその罪に向き合い償う機会を奪い、私たちの社会が罪を犯した人の立ち直りを助ける責任を放棄し、共に生きる世界を奪い、応報感情による人々の分断を生み出すという、私たち人間の過ちをさらに重ねていくことになります。
私たちは死刑制度が存在する社会の中で、死刑についてほとんど知ることなく、考える機会すら持ち得ていない状況にあります。また、死刑になりたいと望んで犯罪を犯す人もいるように、死刑制度が新たな犯罪を誘引する可能性もあります。
私たちは、死刑に関する意見や立場の違いを認め、遺族の悲しみや思いに向き合いながら、この制度について議論していくことが大切だと考えます。そのことが、真の意味で、憎しみを超え、人と人が信頼し合い、安心できる社会へとつながっていくことになると信じます。
ここに、あらためて今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、今後、死刑執行を停止し、死刑廃止に向けての取り組みが進められるよう願います。
2022年7月26日
真宗大谷派宗務総長 木越 渉