このたび、すべての高等学校の授業料を無償化する法案が国会に提出されたことは、公立、私立の学校だけでなく、「日本の社会全体で広く学びを支える」という理念から、高等学校段階に該当する外国人学校の生徒についても同等額を支給するという画期的な措置であり、その趣旨に賛同するものであります。
しかし、内閣は、当面この高等学校無償化制度の対象から、朝鮮高級学校を除外するという報道に、大きな不安を感じざるをえません。
今回は、各種学校に位置付けられているインターナショナルスクール、中華学校、韓国学校などには無償化制度の適用を予定されておられるようです。65年前、敗戦直後から、日本に残った朝鮮人たちは自らの民族の文化伝統を子どもたちに教育するため、自身の力で学校をつくり28都道府県で各種学校として認可を受けています。
もしこのたび高等学校無償化対象から10校の朝鮮高級学校を除外することになれば、教育の機会に差別を生じ、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの「学び、育つ権利」を大きく阻害することになると思われます。
日本も批准している子どもの権利条約では、「児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生または他の地位にかかわらず」いかなる差別も禁止しています。
私たちは在日朝鮮人の歴史と、現在もかかえる問題を軽視してはなりません。
高等学校無償化を朝鮮高級学校に適用しない措置は、排外主義を増幅させ、閉塞した社会をつくることにつながりかねません。
「四海のうち、みな同朋」という宗祖親鸞聖人のみ教えに基づき、多様で豊かな文化を認めあい、共に生きあえる、平和で平等な同朋社会が実現することを希求いたします。
高等学校無償化措置を、一部の例外なく実施されることを切に要望いたします。