7月6日、法務省が死刑確定者7名の死刑を執行したことについて、真宗大谷派では9日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。
死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明
7月6日、東京拘置所で3名、大阪拘置所で2名、広島拘置所で1名、福岡拘置所で1名の死刑が執行されました。
オウム真理教が起こした事件によって亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、遺族、被害者の皆さまの悲しみや、今なお後遺症・心的外傷後ストレス障害などで苦しんでおられる方々の心情を思うとき、言葉を失います。
このたび死刑執行された人々は、オウム真理教の教祖および信者であります。彼らの犯した罪により、29名の尊いいのちが奪われ、負傷者は6000名を超えました。かけがえのないいのちを奪い、人間の尊厳を冒す犯罪行為は、絶対に許されません。私たち仏教者は、その犯罪行為が宗教による救済の名のもとに行われたことに衝撃と憤りを覚えます。同時に、教祖に無批判に追従した青年たちを思うとき、現代を生きる人々の悩みや苦しみにいかに応えていなかったかが知らされ、仏教者としての責任を痛感いたします。しかしながら、一度に7名の死刑を執行して、事件の真相や問題の内実を不明のままに終わらせ、忘れ去ろうとするありかたに危惧を感じずにはおれません。だからこそ私たちは、この事件によって問われたことを今後も究明し、真摯に向き合っていかなければならないと考えています。
私たち真宗大谷派は、どの人も救うと誓われた阿弥陀の本願の教えに基づき、広く社会に対して、死刑執行の停止と死刑制度について論議していくことの大切さを呼びかけてまいりました。罪を犯した者のいのちを奪う死刑の執行は、根源的に罪悪を抱えた人間の闇を自己に問うことなく、他者を排除することで解決とみなす行為にほかなりません。そのことは決して真の解決とはならないでしょう。死刑制度は、罪を犯した人がその罪に向き合い償う機会そのものを奪います。また、私たちの社会が罪を犯した人の立ち直りを助けていく責任を放棄し、共に生きる世界をそこなうものであります。
ここにあらためて、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、今後は死刑執行を停止することを強く求めます。そして死刑制度についての論議が広がり、廃止に向けての取り組みが進められることを願います。
2018年7月9日
真宗大谷派宗務総長 但馬 弘