真宗大谷派の最高議決機関である宗会(常会)において、6月14日『核燃料サイクル推進に反対する決議』・『日本国憲法「改正」反対決議』が宗議会にて可決されました。
核燃料サイクル推進に反対する決議
さる5月30日、最高裁第一小法廷は、高速増殖炉「もんじゅ」設置許可をめぐる行政控訴に対し、先の名古屋高裁金沢支部の「安全の証明がなければ運転は認められない」という「いのち」を重視した判断をくつがえし、現地住民の不安や原子力の危険性には答えることなく、「危険が証明されなければ運転を認める」という行政追随の判断を下しました。
一方、国の原子力委員会は、今秋取りまとめ予定の「原子力長期計画」中間報告で、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場で使用済み核燃料の再処理を行うことで、核燃料サイクルを推進していくことを発表しました。
半減期2万4000年のプルトニウムは核兵器にも転用可能な猛毒を持つ元素です。核燃料再処理に必然する永遠とも言える年月に渡る深刻な放射能汚染と核兵器転用可能なプルトニウムの拡散を恐れ、世界各国が核燃料サイクルからの撤退を決める中、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開と核燃料再処理へのゴーサインにより、日本は核燃料サイクル推進に本格的に足を踏み出そうとしています。世界の潮流に反して日本が核燃料サイクルを推進することは、プルトニ ウムの蓄積による潜在的核保有国になるのではないかとの疑念を生み、国際社会からの批判にさらされることになるでしょう。
私たち真宗大谷派は、1999年9月に発生し周辺住民への被曝被害にも及んだ東海村JCO臨界事故に際し、「危険の上に成り立つ豊かさから、いのちの尊厳に立ち返ってのエネルギー政策の見直し(趣意)」を内閣総理大臣に要望し、さらに2002年1月には、真宗ブックレットNo.9『いのちを奪う原発』を発行し、「原子力による被曝の拡散と核廃棄物の蔓延は、未来への絶望と無責任であり、いのちへの冒涜であり、共に生かされていく世界の喪失である」 と、真宗門徒としての視座を一般社会に公開したことであります。
プルトニウム利用推進は、原発と核兵器開発との区別を曖昧にするとともに、放射能による膨大な「ヒバクシャ」を生み続けるものであります。ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下からイラク戦争をはじめとする劣化ウラン弾等による戦争に関わる被曝と原発推進や核燃料再処理によって生ずる労働者と住民の被曝、その悲しみは世界中に拡散してしまいました。もうこれ以上、日本が未来の被爆者を生み出すことの一端を担うことは止めなければなりません。
共に生かされていく世界である浄土を願い、いのちの尊厳に真向かう宗教者として未来への希望を閉じる核燃料サイクル推進に反対する決議をいたします。
2005年6月14日
真宗大谷派宗議会