国際的テロリズムの行為並びに報復のための武力行使中止を求める決議文
2001年9月11日、アメリカ合衆国における同時多発テロ行為によって多くの人々の尊いいのちが奪われ、甚大な被害を受けたことに対し、深く哀悼の意を表し、関係する人びとに衷心よりお見舞いを申し上げます。
人間を踏みにじる非道無惨なこのテロ行為に対し、私たちは強い憤りと深い悲しみを覚えます。いかなる主義主張があろうとも、「いのちの尊厳」を否定する行為は絶対に許されません。
現在、このテロ行為に対する報復として武力行使がなされていることは誠に残念であります。真宗大谷派宗務総長名をもって、このことを危惧し、武力行使をしないよう強く要望(9月21日 内閣総理大臣と米国大統領あての要望書)してきましたが、阻止できなかった無力さを恥じるものであります。
すべてのテロ行為は、憎むべき卑劣な行為です。しかしながら、その行為に対して武力をもって報復することは、戦争の悲劇を繰り返し、多く の人びとのいのちを奪い、あらたに難民を生み出しております。これこそが人間自身の持つ愚かさであり、悲しさです。正義という名の殺人によって平和を実現しようとする人間の迷妄は破られねばなりません。民族・言語・文化・宗教など様々な違いを認めあい、真実の平和を願い、同朋として出遇う道を模索する以外に、テロリズムを根絶することはできないと確信しております。
私たち真宗大谷派は、過去の戦争に関与し、多くの国と人びとに多大なる苦痛と悲しみを強いた歴史をもっています。生きとし生けるものを平等なるいのちとして見出す仏陀の教えをいただきながら、その教えに背いて戦争に協力した罪責は、どれだけ反省しても償うことはできません。私たちは今、戦争の歴史を検証し自らの加害責任を直視し、戦争に二度と加担してはならないとの決意をあらたにしております。
世界における民族、宗教の相違による問題と経済格差による貧困等の諸問題に対する無知・無関心をあらためて自覚し、全世界の悲しみを真摯に受け止め、あくまでも武力行使に依らない、外交的努力と人道的支援こそ日本国の世界平和に貢献する道であると確信し、宗教者として四海平等の仏陀の精神の具現に向けて一層の精進を誓うものであります。
私たちは、これ以上犠牲者を生み出すことのない、すべての人びとのいのちの尊厳が守られる叡知の結集を願い、テロ行為並びにテロ行為に対する報復としての武力行使を、即刻、中止されることを強く要望し、平和実現への努力を惜しまないことを決議いたします。
2001年10月17日