2002年9月18日、福岡、名古屋拘置所で2名の死刑が執行されたことを受け、翌19日、「死刑制度を問いなおし死刑執行の停止を求める声明」 を発表しました。
死刑制度を問いなおし死刑執行の停止を求める声明
昨日9月18日、福岡、名古屋の両拘置所で2名の死刑が執行されました。
私たちは、1998年6月29日以来、「死刑制度を問いなおし死刑執行の停止を求める声明」を宗派として表明し、教団内はもとより、広く社会に対して死刑制度について論議していくことの大切さを呼びかけてまいりました。
しかし、このたび私たちの願いが聞き届けられることなく、引き続き死刑が執行されたことは、誠に悲しむべきことであります。私たちは、たとえ、どのような罪を犯した人間であっても、それを排除することなく、かけがえのないいのちとして尊重することをとおして共に生き合える世界を、阿弥陀如来の本願として教えられています。私たちはその根源の願いに立って、一人ひとりの人間が、そのいのちの尊厳において見出される社会の実現を願うものであります。
現在、死刑制度を廃止または死刑を執行せず事実上廃止している国は111ヵ国、死刑存置国は84ヵ国となっており、国際社会は確実に死刑廃止に向けての歩みを続けています。日本政府は、1998年11月に国連の自由権規約委員会から、死刑廃止を目指して具体的な措置をとるよう勧告され、また、近年「死刑廃止を推進する議員連盟」等により、国会の場で死刑廃止が論議されております。このような状況の下で行われた死刑執行は、死刑廃止へと向かう世界の流れに真っ向から対立するものです。
また、昨年12月27日の死刑執行は、被害者遺族から執行停止の申し入れがなされていた中にもかかわらず行われたと聞き及んでおります。これは「生きて償ってほしい」と言い続けて来られた被害者の気持ちを踏みにじるものです。一人の人間のいのちを奪い、死刑囚の家族に新たな苦しみを与え、被害者もまた、それによって救われることのない死刑制度を、私たちはあらためて問い直さなければならないと考えております。
死刑制度を廃止してきた国々の多くが、まず数年間にわたって死刑の執行の停止を行い、議論を積み重ねて死刑制度の廃止に至っています。私たちもまた、死刑制度を問いなおし死刑執行の停止を求め、死刑制度について論議していくことの大切さを呼びかけてまいりました。
私たちは、どこまでも加害者の償いが可能となり、被害者にとっても、その苦悩から解放される新たな関係を生み出していくことを願っており、そのため、さまざまな立場の人々と共に考え、論議していくための場を開いていくことにつとめる所存であります。
ここに、あらためて今回の死刑執行に遺憾の意を表明すると共に、今後の死刑執行を停止し、死刑制度廃止に向けての取り組みが進められますよう願うものであります。
2002年9月19日
真宗大谷派宗務総長 三浦 崇