真宗大谷派の最高議決機関である宗会(常会)において、6月8日『教育基本法「改正」に反対する決議』が宗議会にて可決された。
教育基本法「改正」に反対する決議
2003年3月20日、中央教育審議会は「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から」「教育基本法を改正する必要がある」とする答申を文部科学大臣に提出しました。
同答申では、「国民の間での自信の喪失とモラルの低下、青少年の凶悪犯罪やいじめ・不登校・中途退学・学級崩壊など」を、学校教育に起因するものなのか、社会に起因するものなのかを十分に見極めることもなく、短絡的に現行教育基本法の問題と決めつけ、子どもの心や家庭への国家の過剰な介入を促進・ 容認する教育基本法「改正」を、強引に導き出しています。その内容は、「日本の伝統・文化の尊重」の名のもとに、「愛国心の育成」「復古的な道徳教育の強化」や「国家への奉仕・献身」の重要性を強調するとともに、もう一方で、能力主義・競争主義・強者の論理による教育再編を促すものであります。
2000万人を超える犠牲者を出したアジア太平洋戦争の惨禍への深い反省に立ち、私たちは、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を3大原則とする日本国憲法を手に入れました。相前後して制定された教育基本法は、その前文で、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」と述べ、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期」し、「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底」することで、日本国憲法の理想の具現化を図ろうと制定されたものであります。
にもかかわらず近年の動きは、国旗・国歌法が制定され、国家主義に立った著しく歪んだ歴史観を持つ教科書を検定合格とし、新学習指導要領・小6社会学習目標に「国を愛する心の育成」を掲げる等、教育現場への国家の過剰介入が加速度的に進んでいます。これら一連の動きは、憲法「改正」のためなされているものと言わざるを得ません。
教育とは、一人ひとりの人間の自己形成を促進し支援する営みであり、国家が特定の人間像を押し付け、その形成を図るといったものであってはなりません。まして、子どもたちは国家のために存在するものでは決してありません。
私たち真宗大谷派は、過去において、仏教者としての本分を忘れ、宗祖親鸞聖人の仰せになきことを仰せとし、無批判に国策に積極的に協力した自らの戦争責任を深く懺悔して、1995年、宗議会において「不戦決議」を採択して「惨事を未然に防止する努力を惜しまないこと」を誓いました。
平和憲法「改正」の道を開き、国際紛争を解決する手段として戦争をも辞さない国を支える人づくりを目指すとともに、強者の論理に立つ能力主義で人間を分断することを推し進めようとする教育基本法「改正」に、私たちは真宗仏教者として断固反対することを、ここに決議するものであります。
2004年6月8日
真宗大谷派 宗議会