去る3月6日、文部科学省が、米国・英国の学校評価機関が認定した外国人学校卒業生にも大学入学資格を認めることを発表する一方、アジア系学校出身者は、資格認定から除外されたことに対し、3月11日付、真宗大谷派同和推進本部は、本部長名にて文部科学大臣宛に抗議文を送付しました。
朝鮮学校をはじめとするアジア系学校出身者への大学入学資格未認定措置に対する抗議
去る3月6日文部科学省は、これまで高等学校卒業者や大学入学資格試験合格者などに限定されてきた大学入学資格を、米国・英国の学校評価機関が認定した外国人学校卒業生にも認めることを発表いたしました。その一方で、朝鮮学校をはじめとするアジア系学校出身者は、資格認定から除外されました。
私たちの国は、「日本国憲法」において国民に「ひとしく教育を受ける権利」を保障していますが、この権利は日本社会に生きる外国人にも、同じく認められるべきものであります。少なくとも、一部外国人には開かれても、朝鮮学校やアジア系学校にはその権利が認められないとする方針は、憲法の精神を踏みにじるだけでなく、日本がアジアの中の一国であることを見失っていることを暴露したものであります。
これまでも、日本政府の外国人に対する教育制度の差別的あり方については、国内的にも日本弁護士連合会からの改善を求める勧告があり、国際的にも国連の 「子供の権利条約委員会」や「人種差別撤廃条約委員会」などによりたびたび重大な人権侵害であることの懸念が示され、その是正を求める勧告が続けられています。にもかかわらず、今回もさらに朝鮮民族等のアジアの人々に向けられる差別的措置を厳存させているのであります。
かつてこの国は、「大東亜共栄圏」の理想を掲げ、「聖戦」と称して、アジア諸国の人々に言語を絶する惨禍をもたらしました。とりわけ、朝鮮民族に対する侵略的所業は、名前や言葉や文化、民族のアイデンティティを収奪し、日本人として死ぬことを強制する、いわゆる「同化政策」として押し進められました。このような非人道的行為は、今も多くの人々を苦しめ、その心は未だに癒されることがありません。そして、私たち真宗大谷派も、時の国家に追随し、その道を積極的に推進したのであります。
自らの罪責に対する懺悔に立って、戦争へむけた誤った歴史を二度と繰り返さないためにも、国家や民族、文化や言語、思想等の差異を認めあい、共に生きあえる社会を実現することが、今もっとも求められていることでしょう。しかし、今回の未認定措置は、「北朝鮮」問題に対する国民意識への配慮をいいながら、日々朝鮮学校の学生にむけられる抑圧と差別をそのまま肯定し、かつての「同化政策」がそうであったように、異文化異民族を排除することでしか成り立たない国家を再生産することになりかねないことが危惧されるのです。
21世紀を「平和と共生」の時代にという人類の深奥の願いを担うのは、未来の青少年でありましょう。その人たちが、自らの民族や文化の独自性を尊重されることのないこのたびの措置は、決して許されるものではなく、ここに強く抗議し、方針の撤回を要望します。
2003年3月11日
真宗大谷派同和推進本部長 大城 雅史