2010年6月7、今日はいわばワシの生みの親に会えるとあって、前夜から緊張してなかなか眠れんかったが、眉毛を念入りに整えてワシは東本願寺を出発し、一路、常通寺に向かった。 常通寺に着くと、甥のブットンくん(大阪教区御遠忌キャラクター)、原作者の北畠さんのご一家をはじめ、ブットンくんの生みの親である大阪教区「子ども同朋唱和講習会」の講師の皆さんが迎えてくれたのじゃ。
鸞恩くん(以下、鸞恩)
は、はじめまして。鸞恩です。まず実際にワシの姿を見ての感想を聞かせてください。
北畠玄さん(以下、北畠)
四月一日のデビューを拝見したのですが、鸞恩くんは眉毛の形等、細部にこだわってデザインしたので、どのように仕上がっているのかとても心配でした。でも鸞恩くんの姿を見て、その大きさやスケールに衝撃を受けました。御影堂に集う大勢の参詣者、お荘厳も相まって、想像を超えた大きな世界に出会った気がして、自分の中での小さなこだわりが吹き飛んでしまいました。
ブットンくんは、各お寺での「子ども同朋唱和講習会」で、直接子どもに接するキャラクターなので、頭は大きくして全体的に出来るだけ身体が小さくなるように心がけたのですが・・・。鸞恩くんには、良い意味で期待を裏切られました。何故かずっとニヤニヤしていました。
鸞恩
(ホッ)ワシが生まれた背景を教えてくださいな。
北畠
キャラクターが流行る云々よりも、昔から花まつり等の子どもを対象にした仏事やパレードには着ぐるみがいましたよね。ディズニーランドでいう「夢の国」ではないですが、境内を子どもたちの「仏国土」にという願いからキャラクターを発想しました。実際ブットンくんには、「今度の法要で庭儀列(稚児行列)に入ってほしい」という要望もいただきました。
鸞恩くんは、私たち「子ども同朋唱和講習会」スタッフが、親鸞聖人にこだわって創出した作品でした。最初に皆で出し合ったキャラクター案の一つに「ブットンくん」と、ライオンに宗祖をイメージした眉毛を加えた「シーク(獅子吼)」というキャラクターがあり、そのライオンのたてがみを帽子(もうす)に見立てて、法衣を着けました。しかし親鸞聖人を模したものを我々が出すのはどこか恐れ多い感がして、表に出すのを自粛した作品でした。しかし、その絵がどうしても諦め切れていなかった折、子ども御遠忌のキャラクター募集企画を知り、「本山から選出されるのであれば」という思いから、「ブットン(仏恩)くん」に因んで、ライオンの「鸞恩(らんおん)くん」と命名して応募しました。
製作コンセプトは、ブットンくんも鸞恩くんも、一般的に見れば子豚とライオンなのですが、最初の見た目(入り口)はそうであっても、キャラクターのことを見て・聞いて・知っていくにつれて、だんだんとブットンくんは阿弥陀様を、鸞恩くんは親鸞聖人をイメージできるようにしようと思いました。僕たちは思い入れもあるので、鸞恩くんがますます親鸞聖人に見えてきました。
鸞恩
照れるのぉ…。ワシが御遠忌キャラクターに採用されたと聞いた時の心境は?
北畠
三体ともに着ぐるみができるとは思っていませんでしたので、想いが形になると聞いてすごく嬉しかったです。形があるのとないのでは大きな違いですね。
鸞恩
娘の蓮と、あかほんくんの印象を教えてくださいな。
北畠
蓮ちゃんは、私の中からはとても出てこない、女の子らしい発想で可愛らしいですね。
あかほん君は、六歳のお子さんが考えたと知ってびっくりしました。しかも表紙部分を開けると「誓いの言葉」が書かれていたのにも驚きました。
三体いるからそれぞれが活きるんだと思います。可愛い蓮ちゃんとあかほんくんがいる中で鸞恩くんの威風堂々とした出で立ちが活きてくるんだと思います。東本願寺に因んで創出されたこの三作品が選ばれたことに本当に不思議なご縁を感じています。
鸞恩
今後ワシらに期待することを聞かせてください。
北畠
ブットンくんは、「子ども同朋唱和講習会」の取り組みの中で、お寺の子ども会を発足・充実させていきたいという願いの中で生まれました。
子どもがブットンくんの文房具を学校に持っていくと「それ何?」と話題になったり、そのキャラクター(着ぐるみ)が近くのお寺に来るということで、初めて参加してくれる子もいます。
鸞恩くんたち子ども御遠忌キャラクターは、全国の方々と出会える機会が多いと思いますので、益々の活躍を期待しています。キャラクターが老若男女の方々に広く認知されて、その一体一体に懸けられた願いを知っていただくことで、少しでもお寺と親鸞聖人に出遇うきっかけになれば嬉しいです。しかしキャラクターはずっとそのお寺にいれる訳ではありませんし、子どもからの関心が、キャラクターからお寺という場に矢印が替わる時があると思います。願いを見失わず、方向性を持っておかなければならないといつもスタッフ同士で確認し合っています。
キャラクターによって子どもたちを受け入れたお寺に、「夢」と「安心の場」を皆さんとご一緒に築いていければと思います。
子ども御遠忌キャラクターも、二〇一一年の御遠忌に向けてということと、二〇一一年以後を同時に考えながら、いろんな方々にお育ていただきたいと思っています。
鸞恩
ありがとうございました。今日はワシのルーツを知れて嬉しかったわい。
北畠
来てくれて嬉しかったです。また子どもたちと遊んでね。